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一期一会~原田・永倉の場合~①

今年初の作品です☆

実はこれ、去年の1月に完成していて貯めていた作品なんです。

一番最初に千月と原田さん(&永倉さん)の出会いを書きたくて書いたのが最初でして、原田・永倉の場合(全4話)をすべて書き終わったあとに、どうせなら攻略対象キャラ全員のを書いてみようと思いまして一期一会シリーズとなったのです。

一期一会シリーズは千月視点ではなく、攻略対象キャラ視点で書こうと決めたのは原田・永倉の場合を書き終えたあとだったため、この話だけ千月視点も混ざっています。

直そうとも思ったのですが、これはこれでいいなと思いましてそのままUPしました(*´∀`*)

ではどうぞ↓(o・・o)/



これはまだ新選組ができる前のお話・・・。


千月が試衛館に来て5年程たったある日の出来事。

千月は黙々と道場で一人稽古していた。

先程の稽古で総司に久しぶりに負けたのが余程悔しかったらしく、ただひたすら竹刀を振っている。

ここ最近の稽古はすべて引き分けで終わらせていたのに。

この5年で総司の力はどんどんと強くなっていき、やはり男と女の筋肉の付き方は根本的に違ったりするので正直なところ総司の剣を受ける時の重みは結構辛かったりしている。

だが、負けず嫌いの千月は明日の稽古は総司に負ける事のないように必死に稽古していた。

『お、千月君。探したぞ。』

「どうしましたか?近藤さん。」

近藤が突然にこにこしながら道場の入口に立って千月に声を掛けた。

『千月君。ちょっとばかし町まで使いを頼んでも良いかね?』

「はい。どのような用事でしょうか?」

千月は床に置いてあった手ぬぐいを拾い上げて自分の額の汗を拭きながら近藤の近くに寄っていく。

『稽古中にすまないんだが、明日、二人程客人が来る予定でな。その方達にお出しするお茶菓子を買ってきてもらいたいんだが・・・頼んでも良いか?』

「いえ、大丈夫ですよ。わかりました。お茶菓子はどんなものでも良いですか?」

『それは千月君に任せるぞ。』

近藤は自分の懐から巾着を取り出して千月に渡した。

「わかりました。では、すぐに支度をしてきますね。」

『それとだな、千月君。』

道場から出ていこうとした千月に近藤は声を掛けた。

「どうしました?」

『ああ。出掛けるのなら女物の着物を着ていくといい。年頃の女子に毎日毎日男の格好なんてさせておくなんて可哀相だからなぁ。外に出掛ける時くらい着飾って行ったらどうだろうか?』

千月はいつも人目を気にして男装をしている。だが彼女も15歳。普通なら綺麗な着物を着て歩いていてもおかしくない年頃だろう。

男まさりの千月でもやはり綺麗な着物を着て歩きたいという普通の女の子のような希望を持っていない訳ではなかった。

「ありがとうございます。・・・ではお言葉に甘えて。」

千月はにっこりと近藤に微笑み返して道場から出て行った。


「女物の着物なんて久しぶりだなぁ。」

押し入れの奥深くに眠っていた着物を取り出して身に纏った千月。

桜色の着物がこの季節にぴったりとあっている。髪は結って簪を付ける。普通の事だが千月にとっては本当にめったにない珍しい事である。

「でも腰に刀がないのはちょっと落ち着かないや。」

いつもより身軽過ぎてなんだか物足りない感じがしている。

でも、さすがにいつも腰に下げた刀をこの格好でぶら下げるのは出来ない。

しかし何も無いとは思うが念のため護身用の守り刀をひっそり胸元に潜ませている。

毎日毎日稽古三昧の千月はこうやって江戸の町をふらふらと歩き回るのも久しぶりである。今度いつこうやって歩き回れるか分からない。江戸の町の風景をしっかりと目に焼き付けながら歩く。

千月は上機嫌で大福屋に向かって歩いていた時。近くで人々のざわめきと共に男の怒鳴り声が聞こえた。

『おいおい。俺様にぶつかっておいてごめんの一言で済むと思ってんのか?』

道端で浪士が子供に絡んでいた。浪士は男の子の腕を乱暴に引っ張り上げながら睨みつけている。その男の子はもう泣き出す寸前である。

だが、周りに居るのは商人ばかりなので誰も子供を浪士から助け出す事が出来ずに困っている。

子供相手に乱暴するなんて最低である。浪士だとか以前に大人のする事ではない。

気付けば千月はその男の子を庇うために走っていた。

『俺様の着物が汚れっちまったじゃねぇか。ちゃんと金は払って貰わなければなんねぇわな。あん?もし払えねぇって言うなら・・・。』

浪士は刀の先を子供の顔に向ける。

その瞬間、周囲のざわめきも大きくなる。

「ちょっと!子供にそんな物向けるなんて恥ずかしくないんですか!みっともない真似はやめなさいよ!」

千月は子供の前に飛び出して行って盾になる。そして浪士を睨みつける。

『はっ?なんだ、ねーちゃん?大体、そっちガキが先にぶつかってきて俺様の着物を汚したんだろ?』

「あんた、耳悪いんじゃないの?ちゃんと謝ってたのが聞こえなかったんですか!」

『ああ、聞いていたさ。だが、この着物は俺様の一張羅だったもんでな。見てみろよ。こんなにも泥まみれになっちまったんだぜ?』

「・・・大人気ない。自分の見た目ばかりに捕われて周囲の様子に気を止める事すらできないなんて・・・。貴方、それでも侍ですか。」

浪士は千月を睨みつけているが千月も負けじと睨み返す。

『なんだとっ!』

「町民を守ってこその侍が何故町民に刃を向けるのですか。」

周りにいた町民からそうだ、そうだという声が飛んだ。

『っ!馬鹿にしやがって!・・・お前、容姿だけは良いようだな。俺様の妾になるというなら今回は許してやっても良いぞ。』

ニヤリと笑う浪士。千月の腕に手を伸ばして触ろうとしてくる。

・・・気持ち悪い。

「そんなのこっちから願い下げよ!誰があんたなんかの妾になりますか。」

千月は思いっ切りその浪士の手を振り払った。

そして無性に浪士の事を殴り飛ばしたくなってきた。

・・・こいつ、刀を持っていれば勝てるとでも思っているんではないか。

そんな馬鹿みたいな考え今すぐに捨てさせてやる。

隙を見て一発・・・いや、二、三発は殴らせて貰おうではないか。

素手でも帯刀した人間に勝てるという事実を今ここで証明してやろう。

千月は身構えつつも睨み返し浪士に攻撃できる機会を待ち構える。

『口だけは随分と達者なようだな。・・・それなりの覚悟は出来てるんだろうなぁ?』

浪士は刀を上に振り上げた。

・・・まずい。

私は斬られたとしてもすぐに傷は塞がるから良いが周りの人間にそれを見られるのは駄目だ。

けど、避けたら後ろにいる男の子に当たる・・・。

千月は咄嗟に胸元にある守り刀を触った。

・・・・・居合か。

たしか以前見たことがあった気がする。

見様見真似でどうにか出来るだろうか。

もう一か八かで守り刀を握った。

そんな時。

―キンッ!

千月の視界の中に長い棒と男しっかりと筋肉のついた腕が飛び出してきた。

・・・槍?

浪士の喉元に容赦無く槍先が向けられている。

『随分と勇ましい女がいるもんだな。』

槍の持ち主が口を開いた。

『そうだな。まさに江戸の女ってやつか。』

背後から声が飛んで来る。この人の知り合いだろうか。

突然現れた赤毛の槍使いの男は更に浪士喉元に槍先を引き付ける。

槍先に太陽の光りが当たってきらきら輝いている。

『おい。女子供に手出すんじゃ男も終わりだと思わねえのか?』

・・・・・あっ・・・この人の眼・・・。

真っ直ぐに男を見据えた山吹色の瞳がすごく、綺麗だ・・・。

その瞬間、千月はなぜだかそこに、ものすごく惹かれた。

後ろにいる赤毛の男の知り合いと思われる無駄に筋肉質な男はその光景をどことなく楽しそうに見ている。

二人共顔は笑っているが浪士に向けられた殺気は物凄い。その気になれば今すぐにでも斬り捨てる事が出来る余裕があるのであろう。

現に筋肉質の男は自分の腰の刀に手を添えていた。

おそらく、この二人はかなりのやり手なのだろう。千月はそう悟った。

果して、試衛館にいる人間以上の実力者達なのかこんな時でも気になってしまう。

『・・・今回は見逃してやっても良いぜ。だが次があるとは思うな。行けよ。』

浪士は羞恥で顔を赤くしながら舌打ちしその場からすぐに消え去った。


千月は内心ほっとしていた。正直なところ、誰も血を流す事がなくて本当に良かったと思う。

千月はふぅっと息を付いてから自分の腕が下から引っ張られている事に気付く。

『お姉ちゃんありがとう。』

男の子が笑いながらお礼を言ってきた。

今思えば女扱いされるのも久しぶりである。

「うん。それはこの人達に言うべき事だよ。」

千月は手で赤毛の男と筋肉質の男を示した。

『お兄ちゃん達、ありがとう。』

背の高い彼等を見上げながら男の子はお礼を言った。

『おう。』

筋肉質の男は男の子の頭をくしゃくしゃと撫で回して笑った。

『今度はちゃんと前見て歩けよ。』

『うん。』

男の子は赤毛の男を見てにっこり笑って見せてから人込みの中に走って行った。

『おい。おねーちゃんも大丈夫か?』

筋肉質の男は心配そうに千月を見た。

「はい。・・・大丈夫です。」

『大丈夫なのは良いが度胸があるのと無謀なのは違うぞ。』

赤毛の男は厳しい目で千月を見下ろす。

ここまで長身のがたいの良い男二人に上から見られていると威圧感が半端ではない。

「すみません・・・。咄嗟に飛び出てしまって・・・。」

『まあまあ。左之もそんな怖い顔すんなって。おねーちゃん怯えちゃってるぞ?』

筋肉質の男は赤毛の男の背中をばしばしと叩く。

赤毛の男はうるさそうに筋肉質の男を突き放す。

『だがな、新八・・・。』

『なんもなく終わったんだから良いじゃねーか。ところでおねーちゃん。ここで会ったのも何かの縁。名前教えてくれないか?』

「・・・えーっと・・・。」

これは自分から名乗るべきなのだろうか?

反応に困っている千月を見て赤毛の男は気を遣ってくれた。

『こーらっ、新八。お前は美人見たらすぐそうやって・・・。大体、人に名前尋ねるんなら、まずこっちから名乗るのが礼儀だろうが。』

・・・美人って。

さらっとそんな事を言えるなんて。この人大分女慣れしてるのか。

千月の中の信頼度がどんどんと落ちていく。

まぁ、見た目は結構ちゃらちゃらしている感じだが、言ってることは結構まともだなと思っていたのに。

意外と中身も見た目どうりなのかも知れない。

『まぁ、そうか。てか、美人さんみたらまず名前を聞くってのが俺の礼儀だ。』

『そして振られても振られても諦めずに最終的には無視されるか平手打ち喰らうかがオチだもんな。』

『左之っ!オチとはなんだよ!俺は結構本気でっ!』

『はいはい。・・・だから名乗りたくなかったらコイツの事無視してもらって良いんだぞ。』

赤毛の男はにっこりと笑ってみせ片目をつぶった。

・・・こんな表情も出来るのか。

不意打ちを喰らった。

先程睨まれたのが結構怖いと思ってしまったので今の表情を見て不甲斐ないがドキリとしてしまった。

勿論ではあるが恋愛感情とかそういうものではなくだ。そう思いたい。

「いえ・・・そんなことは無いですけど・・・。」

『ほーら、見てみろ左之っ!嫌じゃないって言ってくれてるぞ!ってな訳で。俺の名は永倉新八だ。で、こっちのでかい奴は原田左之助。』

永倉は赤毛の男を指差す。・・・でかい奴って。

貴方も十分大きいと思いますよ?

そう呟いた千月。

『なんで俺の紹介までしてんだよ。』

『ついでだよ、ついで!左之は女垂らしだからな。何か間違いが起こったら困るし。』

『お前・・・俺の事、どういう目で見てんだよ。本気にされたら困るだろうが。』

呆れたように原田は永倉を見る。

・・・やっぱり女垂らしなんだ。

でも確かに、原田さん、凄い綺麗な顔立ちしてるもんな・・・。

身近にいる土方さんも綺麗な顔をした人だが、この人はまた違った種類の魅力のある人なんだと思う。

心の中でそう思ってしまった。

「・・・如月千月です。」

『千月ちゃんかぁ。良い名前だな。』

永倉は嬉しそうに笑っている。

「あの、先程はありがとうございました。・・・何かお礼をさせて頂きたいのですが・・・。」

自分でどうにか出来たとは言え、助けてもらったのだからお礼をするべきであろう。

『いや、礼ならいらねぇよ。別に千月ちゃんに頼まれた訳でなく、俺等がやりたくて勝手にやった事だしな。だから気にしないでくれよ。』

永倉はにっこり笑って千月に見せた。

「でも・・・。」

それじゃあ悪い気が・・・。

『新八の言う通り気にしないでくれ。・・・それじゃあ、俺達、ちょっとばかし用があるから行くな。あんまり無茶ばっかりしてんじゃねえよ。嫁入り前の美人さんの娘が身体に傷を付けちまうなんて勿体ないからな。もっと自分大事にしろよ。』

原田はそう言って長い槍を手に持ちながら、背を向けた。

『じゃあ、千月ちゃんの気持ちだけ貰っておくぜ。ありがとうな。縁が会ったらまた会えるだろうな。そいじゃ、じゃあな。』

そして永倉も千月に背を向けて人込みの中に入って行った。

突然現れて風のように去って行った。

これが千月の原田と永倉との出会いであった。

この出会いがこんなにも長く続くなんてこの時の三人に予想出来ただろうか。
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